こんにちは!「女性ライダーQuest」のマーシャです。
このたび新設したカテゴリー「日々のQuest」では、私の日常やバイクライフをより深く、豊かにしてくれる「小さな探求や発見」をお届けしていきます。
第2回目は、『パーティーが終わって、中年が始まる』ですっかりファンになったpha(著)さんの『移動時間が好きだ (幻冬舎plus+) Kindle版』のお話です。
「旅はチープなほど面白い」
多くの旅人から語り継がれたこの言葉の心理を、私はスクーターの移動で実感することになりました。
25歳で免許を取得した私は、盆暮れ正月関係なく、仕事に勤しんでおりました。正確には、遅刻をすると有給休暇が減る、という私のために作られたルールを突破することなく、年間で1週間以上の有休をあっさりとなくしていたのでした。
あの当時に、「ADHD」という診断を受けることができていたら、私の人生も変わっていたのかもしれませんが、それとこれとは話は別なので横に置いておきましょう。
そんな生活でしたので、移動はいつも高速道路を利用していました。時間と効率が全て。いかに最短で目的地にたどり着くか、それだけが課題でした。当時の移動は、風景を「通過」するだけで、五感を使って「感じる」機会はほとんどありませんでした。

しかし、自営業を始めてバイクを手放し、舞い戻ってきたのが125ccのホンダ・リードです。排気量は小さくなりましたが、私の「移動」の質は劇的に変わったのです。
毎年数回、軽井沢の仕事のために往復した道。速度が落ちたことで、今まで観たこともない道、香り、風が、鮮明に私の体に入ってくるようになりました。
緑の道を抜け、ワインディングを止まりそうになりながら登る山道。そのゆっくりとした移動こそが、私に「チープな旅のおもしろさ」を教えてくれたのです。
高速道路という鎖から解放され、自分のペースで進むことの豊かさ。人生に必要な「余白」が、この移動時間の中に隠されていたのです。みんなが口をそろえて「下道が楽しい」という話に、心から共感できる体験でもありました。
そして、これは排気量に関係なく感じることのできる、ふっと心が軽くなる瞬間。
私はあの瞬間が本当に好きです。眉間のシワが緩み、心の底から「ふぅっ」と邪念が飛び出して、澄んだ空気が体中をめぐるのを感じます。遠くまで行く必要なんてないんですよね。日帰りで十分な距離でも、すぐにこの気持ちよさを得られる。それがバイクの魔法です。
大好きな湘南の海沿いを、ゆっくりと潮風を感じながら走るだけで、心は完全にリセットされます。
作中でバイクの話が出てきたとき、思わずニヤリとしたのは、phaさんがこの「移動時間の幸福度」の正体を言語化してくれていることに共感したからでしょう。
私たち現代人は、「時短」や「効率化」を美徳とし、常に時間を盗もうとする「灰色の男たち」(焦燥感や虚栄心)と戦っています。しかし、バイクに乗っている間は、その戦いから離脱し、自分自身と向き合うための純粋な「時間」を取り戻しているのです。
以前、バイクに乗らない方とバイクの話をしていたら、「迷走しているんだね」と言われました。なるほど、作中のphaさんとは相反しますが、確かに瞑想に近いなと感じました。、
現在も巡り巡って別のスクーターと過ごす日々ですが、急がない移動時間で、心の余裕と豊かさを探求し続けたいなと思います。















